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鬼滅の刃

鬼滅の刃

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コミック部門で常に第一位、現在公開中の劇場版は興行収入トップに躍り出ようという勢いで、コロナ禍にもかかわらず連日満員という盛況ぶりである。いわずと知れた「鬼滅の刃」である。早速、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」を観た。コミックは見て(読んで?)いないという、にわかファンには違いないが、CSのアニメ版は最初からおおむね観ている。

それにしても、あの難しい漢字群を小学生まで書くというのは驚きである。主役の竈門炭治郎、竈門禰豆子の「竈」の字など、地名や建物名に使われているケースを除いて、書いたことがある人は少ないだろう。私など漢字検定をやっているような感覚に陥る。

炭治郎が町に炭を売りに行っている間に、一家が鬼に襲われ一人生き残った妹の禰豆子も鬼にされ、炭治郎に襲いかかる。この時、最初に接触したのが「鬼刹隊」の柱・富岡義勇、このあたりの漢字に違和感はない。そして富岡が炭治郎に紹介したのが。育手の鱗滝左近次、この名前あたりから、私の脳に時代背景の大正時代が入る。この育手のもと厳しい修行後、鬼刹隊の剣士に合格、同期が我妻善逸、嘴平(はしひら)伊之助、栗花落(つゆり)カナヲ。「嘴」は「くちばし」とは読めるだろうが「はし」(ともに訓読み)とはなかなか読めない。「栗花落」となったら一部地方で苗字としてあるようだが、これを読める人は一割もいないだろう(鬼滅ファンにとっては今や常識らしいが…)。同じ読み、意味に「堕栗花」がある。ともに(つゆり・ついり)と読み、栗の花が落ちるころに梅雨入りすることを表した言葉である。

鬼刹隊の柱は九人。前記以外の八人は「無限列車」の主人公・煉獄杏寿郎をはじめ、胡蝶しのぶ、宇随天元、甘露寺蜜璃、悲鳴嶼行冥、時任無一郎、伊黒小芭内、不死川実弥である。「れんごく」は読めるだろうが、悲鳴嶼(ひめじま)、不死川(しなずがわ)は迷う。不死川なら素直に読めば「ふじかわ」だが、ここでは返り点を入れて「しなずがわ」と読ませる。さすがに、これは無理読みか? お館さまは産屋敷(うぶやしき)耀哉で、産土(うぶすな=生まれた土地)を連想させ、生まれつきの鬼刹隊の棟梁の屋敷という意味だろう。

名のり(名前だけに使う読み方)となると、現代のキラキラネームなどさっぱり読めない。高校野球を見ながらフルネームで放送してくれ‼ と悪態をつかざるを得ない。ここでも最強の剣士といわれる継国縁壱(よりいち)などなかなか読めない。「縁」は音読みだと「えん」、訓読みだと「ふち、ゆかり、えにし」などだが、名のりだと「まさ、むね、やす、ゆか、よし、より」などと読む。剣士の階級も、干支の十干が使われ甲・乙・丙・丁・戊・己…ときて、炭治郎が那田蜘蛛山で戦う時の階級は癸(みずのと)、最低である。ちなみに、「え」は兄、「と」は弟である。来年は丑年で、十二支は年が変わるたびに使うだろうが、十干を使う機会はあまりないだろう。十干と十二支を組み合わせ一回りするのに六十年、還暦である。

鬼となると、首領の鬼舞辻無惨を除き苗字はない。「十二鬼月」は番号で認識され下弦と上弦の鬼、名は記号のようにみえる。那田蜘蛛山では下弦の伍・累、無限列車では下弦の壱・魘夢(えんむ)、上弦の参・猗窩座(あかざ)……などなどで、まさに難読漢字のオンパレードである。「魘」など余程でなければお目に掛かれまい。「猗」は音読みで「い、あ」訓読みで「ああ、うつくしい」で辞書の厄介になってようやく分かった。こうした難読漢字が延々と続く。

数字も大字を使っており、壱、弐、参、拾などは日常でも使うが、肆(4)、陸(6)、漆(7)、捌(8)、玖(9)となるとほとんど使用しない。この作者のプロフィールは明らかになっていないが、これだけの活字を駆使できるのは「ただ者」ではない。ペンネームも「吾峠呼世晴」とは。

 

  2020/10/19  飯田 善則
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